こどもの可能性を広げる、環境構成と活動設計
こどもの知的な発達は、年齢や発達段階によって一律に決まるものではありません。どのような経験をし、どのような環境の中で活動するかによって、こどもが気づくこと、考えること、そして発揮する能力も変わってきます。
らぼつなぐでは、自然界にある物理現象を題材に、こども自身が気づき、予想し、試し、考えることができる活動を意図的に設計しています。
このページでは、実際の活動内容や環境構成、保育者の関わり方とともに、活動の中で見られたこどもの発言や行動を紹介します。
そして、それらの具体的な事実をもとに、どのような環境や活動の設定が、こどもの気づきや思考を引き出したのかを考察します。
こどもが本来持っている可能性を、環境と経験によってどこまで広げることができるのか。
日々の実践を通して、その可能性を探究していきます。
実践事例01/水に沈むものは重い?
水と木の重さを比較する活動における、こどもの思考(年長児)
この活動で大切にしたこと
こどもたちは、重たいものは水に沈み、軽い物は水に浮くと言う経験を日常生活の中でも経験しています。では、同じ大きさの木と水では、どちらが重いのでしょうか。次の流れの中で、こどもの経験や知識をつなぎ合わせ、自分なりに予想し、確かめる機会をつくります。
【活動の流れ】
①水槽の中に、さまざまな物を入れて、浮くか沈むかを試します
②水を張った容器に木を入れて、あふれ出た水を取り出します
③取り出した水と木との重さを天秤を使って比べます

②を試す前の保育者からの問い
『この中に入れたら、お水ってどうなる?』
⇒こどもの発言【あふれる】
つぎの保育者からの問い『どの分あふれる?』
⇒こどもの発言【入った分】
つぎの保育者からの問い『ここに出てきたお水は何の大きさと同じ?』⇒こどもの発言【木と同じ大きさかな】
こどもの思考に着目 「あふれる」という発言は、物を水の中に入れると水があふれるという、これまでの経験に基づく予想と考えられます。
一方、「入った分」「木と同じ大きさかな」という発言からは、木を入れたことであふれた水と、入れた木との大きさを視覚的に比較し、両者の量的な関係を捉えようとする姿と考えられます。

②の後、天秤で重さを比べる前の保育者からの問い
『木と同じ大きさのお水が取れました。これ(木)とこれ(同じ体積の水)を重さ比べしたらどっちの方が重いかなぁ?』こどもが水の方を指さした後
『なんで水の方が重いと思う?』
⇒こどもの発言【だってさっき木ういたじゃん】
こどもの思考に着目 「だってさっき木ういたじゃん」という発言からは、直前に経験した浮き沈みの現象を根拠として、水と木の重さを予想していることがうかがえます。一つの活動で得た経験を、その後の別の問いに結びつけ、自分なりの理由として表現する姿が見られました。

実践事例02/どっちがはやくゴールする?
木球が転がる直線と曲線のコースを考える活動における、こどもの思考(年長児)
この活動で大切にしたこと
木球が転がるコースをつくる遊びは、こどもたちが大好きな活動の一つです。自由にコースをつくり、繰り返し木球を転がして遊ぶ中で、こどもたちは様々な転がり方を経験しています。こうした遊びの中で得られた体験を、その後の活動で自分なりの予想や考えにつなげ、気づいたことや考えたことを言葉で表現する機会をつくります。
【活動の流れ】
①自由に転がるコースを自分達で作って遊びます
②転がるコースの長さの違い、角度の違いを試します
③スタートとゴールが同じ直線と曲線のコースで、どちらがはやくゴールするか試します

スタートとゴールが同じ位置の直線と、曲線の2つのコース、どちらがはやくゴールするでしょうか?
大人の先入観からすると、直線の方が転がる距離が短いからはやくゴールしそうに見えますね。
こどもたちは、いったいどんな考え方をするのでしょうか?
こどもの思考に着目
自由に木球の転がるコースをつくり、繰り返し転がして遊ぶ経験をしたこどもたち。こうした遊びの中で得られた体験知が、その後の予想を支えている可能性があります。
【最初、すごい縦みたいな感じだから速いんじゃないかなぁ】という発言からは、曲線のコースの始まりが急な傾斜になっていることに着目し、それを速く転がる理由として考えていることがうかがえます。
また、【でもこっちは平らで普通の斜めだからちょっとスピードが...】という発言からは、直線のコースの傾斜と曲線のコースの傾斜を比較し、その違いを速度の違いと結びつけようとする姿が見られます。
自由な遊びの中で得られた体験と、目の前のコースの特徴を結びつけながら、自分なりの根拠をもって予想し、それを言葉で表現する姿が見られました。
実践事例03/つるつるとざらざら
すべりやすい、すべりにくい、を考える活動における、こどもの思考(年長児)
この活動で大切にしたこと
こどもたちは、日常生活の中でも、つるつるしたものや、ざらざらしたものなど、様々な手触りに触れています。また、ものを押したり、引っ張ったりする中で、滑りやすさや滑りにくさを経験しています。この活動では、手触りの異なる木のブロックを滑らせたり、重りをのせて引っ張ったり、傾斜台で滑り落ちる様子を比較したりする中で、滑りやすさ・滑りにくさに関する経験を重ねます。そして、これまでの活動で得られた経験をもとに、身近な素材である軍手の滑り止めに着目し、どちらが滑りにくいのか、さらに重りをのせるとどうなるのか、自分なりに予想し、確かめる機会をつくります。
【活動の流れ】
①手触りが異なる3つの四角い木のブロックを滑らせて遊びます
②クレーン装置のつまむ部分を①の手触りの異なる木のブロックを付け替えて、クレーン装置でものを挟み上げてみます
③滑りやすい台の上に木のブロックを置いて、重り1つの重さで引っ張ります。木の上のブロックに同じ重りを何個置いたら木のブロックが滑らなくなるか確認します
④傾斜台に2つの比較するものをのせて、すこしずつ傾斜台の角度を大きくして行った時に、どちら滑り落ちずに残っていられるかを試します

滑り止めのついた軍手、滑り止めのある面と、無い面、どちらが、滑りにくいでしょうか? また、重りをのせると、結果はどうなるでしょうか?
①~③の活動を踏まえ、④では、最後に写真のような実験を行います。この前に、結果を予想した時の様子が次の動画です。
こどもの思考に着目
【こっちかも、こっちのせたらさ、なんかぷちぷちがさ、反対にくっついて、重たいののっけたらさ、おりないから】という発言からは、重りをのせた場合の軍手の滑り止めの形状の影響に着目し、重りの効果で滑りにくくなるのではないかと考えている様子がうかがえます。
これまでの活動で得られた経験をもとに、目の前の素材の特徴に着目し、滑りにくくなる理由や条件を自分なりに考え、予想を言葉で表現する姿が見られました。
実践事例04/バランスを覚えよう
水平になる条件を試行錯誤する活動における、こどもの思考(年中児)
この活動で大切にしたこと
重りの数や置く位置を変えながら、天秤が水平になる条件を探します。実際に操作して得られた結果を確かめ、思いどおりにならなかったときには、どこをどう変えればよいのかを考え、再び試す機会をつくります。
こうした試行錯誤を通じて、こどもが自分の操作と結果を結びつけ、結果を踏まえて次の行動を考える経験を大切にしています。
【活動の流れ】
木製の天秤に重りをのせて、どこに、何個置いたら水平になるのかを試します

左側に4個の重り、右側に8個の重りをおいて、天秤を水平にします。右側に置く8個の重りはどこに置けばよいでしょうか?試行錯誤した結果が次の動画となります。(本事例は年中児となります)
こどもの思考に着目
8個の重りを置き終えた後、保育者から「どうですか?(水平?)」と問われると、こどもは【ちょっとななめ】と発言しました。天秤の傾きから、まだ水平になっていないことを捉えている様子がうかがえます。
さらに、保育者から「どちらに動かしたらよいか」と問われると、支点に近い方(木の板が持ち上がっている側)を指さし、【こっちが重いから】と理由を述べています。天秤の傾きと重りの位置・重さを結びつけて考えていることがうかがえます。
そして、8個の重りの端を反対側に移動させるように【これをこっち】と指さしながら伝えています。実際にその操作を行うと天秤は水平になり、こどもたちは喜びました。
天秤の状態を捉え、その原因を自分なりに考え、次の操作を具体的に決定する。試行錯誤の中で、結果を踏まえて自らの行動を調整していく思考が見られました。
